住吉

住吉(すみのえ)の 沖つ白波 風吹けば 来寄する浜を 見れば清しも
                                (不詳 7−1158)


「住吉」は、スミノエと呼ばれていた。当時は海岸沿いの景勝地で、万葉集には41首も詠まれている。住吉大社は海の神様である。

有名な太鼓橋を渡る。「上るよりも下る方がこわい」と、川端康成の文学碑に書かれていた。信仰心のカケラもない人間だが、歴史と風格に圧倒され、それなりに神妙な気分になる。境内はあくまで静寂で、悪い心はすべて霧散していった。ような気がした。

奈良時代の万葉人は、難波宮造営祈願のために住吉大社を訪れることが多かったそうである。人々がわいわいと集まり、大変な賑わいを見せ、やがて遊里も形成されていく。遊女とのやりとりが万葉集には残されている。「あられ松原」の歌(1−65)もそうだが、 


暇あらば 拾ひに行かむ 住吉の 岸に寄るといふ 恋忘れ貝
                           (不詳 7−1147)


住吉の海には、恋の悩みをすべて忘れさせてくれる「恋忘れ貝」がいたそうだ。私もそんな貝がほしい。