曽我川

真菅よし 宗我の川原に 鳴く千鳥 間なし我が背子 わが恋ふらくは
                             (不詳 12−3087)

広瀬あたりから、大和盆地を南北に数本の川が流れるが、曽我川も他と同じく、清流とはほど遠い、澱んだ水がほとんど流れを伴わず浮いているようなことである。ゴミが漂い、何カ所も農業用水用にせき止められ、川としては死んだ状態だ。近くに森があって風情を感じる場所もあるが、千鳥鳴く川の面影は全くない。しきりに鳴く千鳥のように、私もあなたのことをしきりに考えているの。などという恋歌も生まれないだろうなあ。
 今回の旅で、川に関係する故地に赴くと、痛ましい思いをすることが多い。田園風景や遠くの山の稜線などは、今も充分息づいていると思うのだが。地域の人々の努力で、川の両岸には桜が植樹されており、春の景色は見事である。