大阪文学散歩もど記 〜てんのじ村〜
黒龍大神
再開発ビルが迫る
阪神高速阿倍野ランプ入口横に、5メートルを越すおおきな碑が建つ。
「上方芸能発祥之地 てんのじ村記念碑」としたため、その下に「大入」と着色して刻まれている。なかなかおしゃれな碑である。上方芸能の父、秋田実先生の書による。
50年ほど前、最盛期には400人ほどの芸人さんが住んでいたという。ラジオ・テレビの普及、高速道路建設や阿倍野再開発の波に飲まれて、今や芸人さんの町という面影はない。
芸人さんたちの思いが込められた立派な碑も、高速道路の下、厳重にフェンスで囲まれており、近づくこともできない。
付近を散策してみた。古い路地や長屋が多く残り、当時の風情を感じることはできる。しゃべくりの声や三味線の音色などは聞こえてこない。遠い過去に消えていってしまった。路地の奥に、黒龍大神という古い社があった。上町台地の西縁にあたり、坂の上には阿倍野再開発のビル群が、町を飲み込もうとしている。