大阪文学散歩もど記 〜中之島西〜
−宮本輝「泥の河」の舞台を訪ねて−
堂島川と土佐堀川がひとつになり、安治川と名を変えて大阪湾の一角に注ぎ込んでいく。その川と川がまじわるところに三つの橋がかかっていた。昭和橋と端建蔵橋、それに船津橋である。(「泥の河」本文)
中之島の西端にあたるこの地域は、いくつもの橋が陸地をつないでいる。地理的な関係は「泥の河」の時代とそう変わりないのだろうが、それぞれの橋が幹線道路の一部となっているし、頭の上には阪神高速道路が走り、車の騒音が絶えない。橋のすぐ向こうには、巨大な大阪中央卸売市場が見える。
小説の舞台は昭和30年の大阪。50年経った今、当時の面影は全くないだろうが、中之島もこのあたりまで来ると、下町の雰囲気が濃い。信雄少年達が登場してもそんなに不自然ではない。郭舟というショッキングな題材をとりあげ、50年前の大阪を教えてくれる。
昭和橋
端建蔵橋