大阪文学散歩もど記 〜空堀〜
上町筋から谷町筋を経て、松屋町筋まで東西に空堀商店街が続く。この一帯は戦災を免れ、古い町屋や路地が多く残る。
数年前から空堀の町屋を保存、再生するプロジェクトが進んでおり、その一つ「萌」という建物の中に直木三十五記念館がある。展示品に囲まれた真ん中に、8畳ほどの畳敷きのスペースがあり、昼寝でもできそうな落ち着いた空間になっている。
「直木」は、本名の「植村」の「植」の時を分解したもの。彼が三十一歳になったとき、名を「三十一」とし、その後年齢に合わせ「三十二」「三十三」と改名していく。「三十四」はなく、「三十五」で落ち着いたとのこと。この近くの安堂寺町で生まれ、中学時代までを大阪で過ごす。文学賞の「直木賞」に名前を残しているが、直木本人のことは意外に知られていないので、記念館の設置が彼を知るきっかけになればいいと思う。
生家の近く、安堂寺町の榎木大明神に彼の文学碑が建つ。前を熊野街道が通る。