能登川
能登川の 水底さへに 照るまでに 三笠の山は 咲きにけるかも (不詳 10−1861)
新薬師寺から白毫寺へ向かう小道を行くと、能登川に出会う。高砂橋が架かっており、川の向こうにこの歌の「貼り紙」がある。上流へ行けばもっと清らかな流れになるのだろうが、このあたりは水量も少なく、花がどんなに咲いても水鏡になれそうもない。橋のすぐ横にはマンションが建っており、万葉の風情はない。
滝坂道(柳生街道)
後日、能登川の源流を求めて柳生街道、滝坂道を行く。市街地を流れる能登川は汚染されていたが、春日山原始林に近づくとさすがに山の中の美しい流れとなる。昼なおうす暗く、昔の剣豪も行き来した滝坂道。朽ちかけた倒木、川の流れを複雑にする大小の岩、青々としたカエデ、踏みならされた石畳、などが一体となっている。紅葉の季節にもう一度訪れてみたいと思った。すれ違うハイカーたちがあいさつを交わしてくれるのもすがすがしい。