勝間田池

   勝間田の 池は吾知る 蓮(はちす)無し しか言ふ君が 鬚なき如し   (不詳 16−3835)

 新田部親王が池を散歩し、きれいな蓮の花に感動して帰ってきた。ある女性にその話をしたところ。女性は、「勝間田池には蓮など咲いていません。そういうあなたの顔に、ひげがないのと同じです」と詠んだ。解釈は色々あるようだが、親王が浮気をして帰ってきたのを、女性がからかっている。「話したり、笑ったり、甘えたりするハスの花に会ってきたのでしょ。見えすいたウソはつかないでね。」
 池からの眺望を詠んだ歌ではないが、現在南都の面影を残す数少ない場所となっている。池にはコンクリートの護岸が施され、ガードレール、ロープが張られ、車もひっきりなしに通り、風情がどんどん失われている。しかし、遠望すれば、薬師寺の両塔、金堂を望む。遠く若草山、春日山、竜王山、三輪山を望み、手前には奈良の市街地が拡がり、興福寺五重塔も見える。水鳥や食用ガエルの鳴き声がひっきりなしに聞こえてくる。