春日野(飛火野)
飛火野
雪消沢
春日野に 煙立つ見ゆ 娘子らし 春野のうはぎ 摘みて煮らしも (未詳 10−1879)
見渡せば 春日の野辺に 霞立ち 咲きにほへるは 桜花かも (未詳 10−1872)
きれいな緑の芝が広がる飛火野は、今も昔も鹿と人間の憩いの場である。芝生が見事に刈りそろえられているのは鹿が食べるからだし、芝生の上には鹿が排泄された固形物が落ちている。奈良人の私は全然気にならないが。
古代人にとっても、春日野は遊宴の地である。(一首目)少女達が摘んだ「うはぎ(ヨメナ)」を茹でている煙が立っている。現代人が好むバーベキューなどと比べて、非常にやわらかい感じがする。(二首目)春日野に霞が立ちこめ、桜が咲いている。シンプルな歌だが、現在の飛火野に立っても同じ情景を味わえる。
うはぎ(春日大社神苑)