広瀬川

  広瀬川 袖漬くばかり 浅きをや 心深めて 我が思へらむ
                          (不詳 7−1381)

大和平野を流れる初瀬川、寺川、飛鳥川、曽我川、百済川、高田川、富雄川などは、すべて河合町広瀬の地で大和川に合流する。文字通り、町名の「河合」そのものである。大和平野のすべての川は、ここ広瀬の地で一つになると言っても過言ではない。その合流点に広瀬神社が鎮座し、奈良の水を守っている。水の神様であり、それは言い換えれば穀物の神、食の神を意味する。
 
「神社の森」などということばは、名目だけになっている姿が多い中で、この神社の森はすばらしく実質を伴っている。長い参道にはぎっしりと木が育ち、一歩中に入り込むとひんやりする。どんな冷房装置にも負けない。2月11日に行われる、奇祭「砂かけ祭」で有名だ。
 歌の「広瀬川」という名前の川は現在ないが、この地で川の水をテーマに歌を詠んだのは、まことにふさわしいと感じた。広瀬川は袖が水に漬かるほど浅いが、私はあなたのことを深く思っている。

広瀬神社