白毫寺
高円の 野辺の秋萩 いたづらに 咲きか散るらむ 見る人なしに (笠金村 2−231)
高円山の中腹にあり、坂と石段を汗かきながら登る。境内に一歩入ると、「来てよかった」といつも思う。仏様も万葉歌碑も五色椿もみんなすばらしいが、何と言っても大和平野一望の大鳥瞰が一番すばらしい。真正面には、生駒山が真一文字にどっかりと座る。北へ、南へなだらかに山並みが続く。奈良の町も建てこんでいるが、やはり緑が多い。今日は風が強いので景色がいいだろうと狙ってきたが、本当に山の端がくっきりと見える。雲が山並みに覆いかぶさる。
歌碑
境内はあくまで静かで、風の音と虫の鳴き声以外には何も聞こえない。山門の前の石段の両側には、世が世なら萩の花が満開のはずだが。志貴皇子の邸がこのあたりにあったと言われている。皇子もこのすばらしい眺めを毎日見たのだろうか。今も昔も目に映る情景が美しすぎるだけに、主人を亡くした挽歌は哀れを誘う。お堂には恐ろしい形相の閻魔様がおられ、お顔を見ると怒られているような気がする。つまらないことにこだわって日々を送っている自分が恥ずかしい。