穴師川

ぬば玉の 夜さり来れば 巻向の
川音(かはと)高しも 嵐かも疾(と)き  
      (柿本人麻呂 7−1101)

穴師川 川波立ちぬ 巻向の 
弓月が岳に 雲居立つらし
  (柿本人麻呂 7−1087)

巻向の 山辺響(とよ)みて 行く水の 
水沫(みなわ)の如し 世の人吾は
(柿本人麻呂 7−1269)

いずれも人麻呂が穴師川(巻向川)を詠んだ歌。相変わらず人麻呂の歌は重厚で暗い。このあたりを流れる穴師川は、人麻呂の歌そのままに大きな音をたてて、水量たっぷりに流れている。川幅は狭いが、三輪山が近いせいもあって、恐ろしさすら感じさせる瀬音である。
写真ではわかりにくいが、1087番の歌碑には驚かされた。あの棟方志功さんが書いたものだが、特大の万葉仮名が碑いっぱいに拡がり、左上には太陽、雲の絵が描かれている。のびやかで力強い歌碑である。