阿騎野(大宇陀町)
東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ
(柿本人麻呂 1−48)
かぎろひの丘からの眺め
48番歌碑
軽皇子(後の文武天皇)とともに狩りの旅に出た人麻呂が詠んだ連作五首のうち、二首の歌碑が建っている。綿密な科学的考証によって、この地がまさに「宇陀の阿騎野」にあたるそうである。遠くに望む山の名前はわからないのだが、狩りの一行が壮大な「かぎろひ(厳冬のよく晴れた早朝、太陽が現れる少し前に太陽光線のスペクトルにより現れる最初の陽光)」を見たであろう地にふさわしい場所である。毎年冬の早朝、「かぎろひを観る会」という催しがあり、寒さに震えながらかぎろひの出現を待つが、実際に見えるのは十年に一度ぐらいらしい。歌碑の建つ場所は見晴らしのいい公園として整備されており、吹き渡る風が心地よい。私以外に訪れる人もなく、一人静かに万葉の世界にひたっている。